パラワン日系人会 第1回総会及びセミナー・ワークショップ開催
式典には専門的な法律のセミナーに加え、直面している課題や解決に向けて貢献出来ることを考えさせるワークショップも組み込まれた構成となり、歴史的に残るイベントでありながら情報量と学びの多い機会となった。なお、前夜にはパラワン州選出下院議員エドワード・ハゲドーン氏が越川大使を含む主な参加者を招待し晩餐会が催された。
越川和彦大使 |
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パラワン日系人会会長マーガレット・ルマワグさん |
パラワン日系人会会長マーガレット・ルマワグさん(65)の挨拶 第1回総会にお迎え出来ることは大変光栄です。特に越川大使のご参加はこのイベントを歴史的なものとし、すべて私達日系人の激励するものであると挨拶。13番目の日系人会としてフィリピン日系人会連合会とPNLSCの設立支援への謝意も示した。また遠方(コロン島から11時間等)からの参加に感謝した。
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越川和彦大使 |
越川和彦大使 パラワン日系人会の役員及び会員への祝辞を送り、パラワン島の人々だけでなく二国間関係の推進にも重要な役割を果たすと期待を込めた。戦前のパラワン島における1世が300人ほどおられ様々な業種の仕事をしていたことから、戦争ですべてが変わってしまったと歴史を振り返り、特に反日感情が強かった同島の日系人の方は、どれほどの苦労をされたか想像することも出来ないと思い遣られた。そして、悲劇を繰り返さないこと、恒久の平和のために役割を果たしていくと誓いの言葉を述べた。
また、特に近年人の交流が日比で多く、具体的には2019年に682,000人の日本人が比国を、一方630,000人の比人が日本を訪問。比人にとって香港を抜いて日本が一番の観光先になっていることに触れ、パラワンは世界遺産もある世界でも最も美しい観光地の1つで、日本人も魅惑すると確信していると述べた。さらに、観光客以外に日本は労働者や学生を比国から受け入れており、多くの日系人が日本語を勉強して日本で仕事をされることを希望していると語った。
1903年にフィリピンへの移民が始まり、難航していたベンゲット道路は日本人労働者によって完成されたと説明、その後、ダバオにおいてアバカ産業で成功し、当時ミンダナオ島において経済的にトップであったザンボアンガを抜いてダバオ州が税収で一番になったことなど日系人としてのルーツに自尊心を持つように訴えた。
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フィリピン日系人会連合会会長イネス・マリャリ博士 |
一方で、ビジネスマンであった祖父を戦争中に殺されたが、それは戦争なので仕方がないという立場を表明。戦後、日本がODAを通じて非常に多額の賠償し信頼関係を構築してきたことに言及。最後に現在について、2016年天皇陛下(現上皇)のマニラで日系人と懇談、2017安倍首相がダバオ市を訪問、2019年天皇陛下の即位の礼に参加、2022年に旭日中綬章を叙勲されたことを発表し日系人を勇気づけた。
日比友好議連の議員から届いた、日系人会発足と総会開催に対する祝辞が読み上げられた。(祝辞以外に個別の内容を以下に記載)
会長の森山裕衆議院議員は戦後の苦難に思いを致し、アイデンティティーを持つ続けて来られた日系人に深い敬意を表した。またPNLSCへの敬意と国籍回復への機運の高まりに期待する言葉を寄せた。青山大人衆議院議員は、多くの日系人が自分のアイデンティティーを確認するために複雑な心境に陥っているであろうことを少しでも和らげたいとコメントした。
猪俣典弘PNLSC代表理事(52)PNLSCは戦争によってフィリピン残留を余儀なくされた日系2世の身元捜し、国籍確認を支援する目的で2003年に発足したNPO法人。現在までに770人の身元が確認出来、 288人が国籍を回復してきた。現在は日比合わせて14人法律家が支援。所在地は東京。フィリピンに十数名のスタッフを擁する。
また、良いニュースとして、アンヘリータ・ヤマモトさんの国籍が7月に認められたことを祝った。戦時中1942年11月4日に、日本人の父(山口県出身)とフィリピ母の間に生まれた。当時は赤ちゃんで父親の記憶は無いが、親類や日系人会関係者が記録を集め、またDNA試験をPNLSCの支援で5月に実施していた。
「日本政府、フィリピン政府、UNHCR、NGOもメディアもサポートしてくれている。最後まで見捨てることなく最善を尽くす」語った。
Ms. Maria Ermina Valdeavilla Gallardo UNHCR フィリピン事務所長(43)「パラワンの日系人は、アイデンティティーや所属に問題があり、対処されなければ2国間の裂け目に落ち込んでしまいます。両国の国籍法の体系において対立点があり問題を複雑にしています。無国籍状態に対処するためには両国のリーダーシップとコミットメントが欠かせない。UNHCRは両国家に対し法的な支援やガイダンス、保護を行います」
また、「日系人の窮状を把握するため午後も残ってワークショップに参加し課題についてヒアリングを行います。東京のUNHCR事務所とも分析データを共有します。パラワン日系人会、日系人会連合会、PNLSC、日比政府とともに誰も取り残さないように合意できる道を探り協力してゆきます」とコメントした。
PNLSC顧問弁護士 ジュサス・シム・ズニエガ(55)法的に日本人の子孫(日系人)と認定される人、PNLSCのサービス(身元捜しや就籍)、フィリピンの法律、日本の法律(戸籍)、無国籍のリスク、日系人の渡航のための要件、また胸に残る事例として、日本のパスポートが発行されたのにも拘わらず比国移民局が出国を最初は認めなかった(が、後で有利に解決出来た)例を紹介。「法律の本に書いてない新しい問題ばかりで勉強する必要があった」と語った。
就籍とは、日本人であるのに戸籍がない、あるいは戸籍の所在がわからない人が家庭裁判所の許可を得て新たに本籍を設定し戸籍を作成すること。中国残留孤児ではすでに約1250人に認められているが、比残留日本人は288人。まだ数百名の2世が国内にいるとされる。
Liter of Light Philippines (NGO)Karen Anne Capizさん(40) 代表代理による説明と組み立てデモ。未電化地域の生活改善及び日系人の収入源、また今度は日系人が光を灯す側になって欲しい(猪俣氏)と実現した。IKEA及びエアアジアも支援。
午後のワークショップでは、下の6つの質問について考えてもらう機会となった。
① 日系人のアイデンティティーはどのように重要か?
② 日系人であることの利点と不利な点は何か?
③ 3世4世の現在の課題や懸念は何か?
④ 上の課題の解決にあなた何が出来るか。
⑤ 日系人会にどのように貢献できるか?
⑥ 個人または日系人会として社会にどのように貢献出来るか?
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スーザン・ザンバレスさん |
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チャーリー・ハラダさん |
回答の一部を示す。
① 誇り。
② 利点は日本に行けること。不利益な点は差別があったこと。今はもう無いという意見もあった。
③ 書類が無く証明するのが難しい。祖父、父親のことを知りたいが情報が少ない。
④ 親類を通じて情報を集めたい。
⑤ 日系人会の活動を支援する。グループチャットで連絡。日本語を勉強する。
⑥ パラワン政府と連携する。
など、前向きな意見が聞かれた。
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エラ・リン・マエ・E・ピオロさん(17) |
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ケント・フフェリー・ヒザルサさん |
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ロッシェル・オオシタ・レントさん |
式典後、参加者からのコメントを紹介する。
大使が来られて光栄で記念すべき式典でした。(スーザン・ザンバレス 62才 3世)
最初から最後までプログラムが良く構成されていた。情報が多く勉強になった。(ダニカ・ジーン 25才 4世)
日本語の学校を持ちたい。(メリアン・ベネラス 53才 3世)なお、会費を支払った正式メンバーはまだ27名。今後、会員が増えること、もっと日系人が名乗り出ることが期待されている。
猪俣氏は「虐殺の歴史があったことを我々は知らなければいけない。日系2世53人がパラワンで見つかったが、8人しか戸籍が取れていない。存命の方は十数名。このままでは明らかに間に合わない。2国間、国連の力を借りてベストを尽くす」と語った。
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