フィリピン国コーヒー品評会2022年 結果発表
フィリピン国コーヒー品評会(Philippines Coffee Quality Competition 2022)が3月18日(金)、ダバオ市Waterfront Insularホテルにて開催された。
目次
1.要約
2. 参加者の分析
3. 受賞者
4. 関係者のコメント
5. 参加自家焙煎店
6. ブース出展団体
7. 総評 なぜBACOFA農協は強かったのか?
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BACOFA Coop揃って記念写真 (全体の表彰ではありません。式全体の終了後BACFA Coop1団体と農業省、貿易産業省の関係者とが記念撮影をしている様子です。) |
2. 参加者の分析
アラビカ種45、ロブスタ種41、エクセルサ種1、リベリカ種0、混合0人。
出品の最低数量は当初180KGとアナウンスされたが、後に収穫状況を考慮し120KGに下げられた。2018年の参加者数が最も多いのは、提出する数量が少なかったためである。2019年~2020年は180KGに引き上げられ、2021年~2022年は120KGであった。
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Region別提出量 |
ダバオ地方の25出品が最多。なお図には表れない情報ですがBACOFA Coopだけで15出品(12個人、3団体)とよく対応しました。2番目にBukidonon州を擁する北ミンダナオ地方の15、ソクサージェン地方の10、CARの9、Region1と2が同数で6と続いた。
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Region別、プロセス別のエントリー |
今回初めて、WashedがNaturalを上回ったように見えるが、統計に間違いがある。Region11に関しては、Washedでカウントされた3名が実際はNatural Processで提出していたことが後の結果発表で判明した。しかしながら、Washed Processの割合が大きくなった傾向が見られる。
今年の提出は合計79(Natural 28、Washed 31、Honey 20)となり先のスライドの87と整合が取れない。要確認。
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アラビカ種のGreen Grading (生豆の審査)。 37がスペシャルティクラス、19が非スペシャルティクラス。 |
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ロブスタ種のGreen Grading (生豆の審査)。 Fine 19、プレミアム7、コマーシャル15。 |
アラビカ種が計56、ロブスタ種が計41、合計97。数字の整合が取れていない。おそらくアラビカ種のGreen Gradingスペシャルティクラスが37は誤りで27なら整合が取れる。数字を細かく気にせず先に進みます。全体的に、エントリー豆の品質が上がってきている傾向が見られます。
3.受賞者
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ロブスタ種 上位入賞者10名 |
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アラビカ種 上位入賞者12名(9位に同点2名) |
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アラビカ部門で優勝Ms. Marifel Dela Cerna 昨年は4位。 |
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アラビカ部門2位はMs. Cherry Gil Cabanday (BACOFA CoopのManager) Marivic組合長の家の向い。初参加初入賞。 |
今年は、BACOFA農協からの入賞は、3名程度でBukidnon州の優良生産者団体から、4~5名の入賞を予想していました。今期はMilalittraを個人的に支援。1点差をつけて優勝出来ると予想していましたが4位。
提出前々日は5名が選別しておりWashed 120KGを仕上げるのに精一杯。Natural Processは間に合わないとマーケティング担当のジョアンナさん。それを前日に他団体(IMDALSA、Malaybalay市)に選別を依頼して出品。聞いたことが無い美しい協力関係だ。
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4位 ブキドノン州タラカグ町の少数民族Talaandig族の団体Milalittra のマーケティング担当Joanna P. Dumaquitaさんが盾を受け取る。 私はここが優勝すると予想していました。 |
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8位の生豆の選別担当:Ms. Ms. Criszalyn Casanes BACOFA農協のキャッシャー担当。 |
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10位 Rosemarie Rupecioさん。(BACOFA Coop役員) 標高1,600m。Pluto集落で最も高い位置。 |
ロブスタ種 優勝は南イロコス州 同州とオンラインで繋げられた。 |
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ロブスタ3位 Sultann Kudrat州 Reyjohn A. Basco君 |
4. 関係者のコメント
農業省事務次官
DA Usec EVELYN G. LAVIÑA
イベントは成功。結果発表にはとても興奮しました。準備委員会(テクニカルワーキンググループのACDI-VOCA、BCAA、Philippines Coffee Guild)がよく働いてくれた。もっと参加者が増えればと思うが、新型コロナや天候のために収穫が遅れた割には健闘した。
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Usec EVELYN G. LAVIÑAさんと |
貿易産業省コルディリエラ地方事務所長代理
DTI CAR Officer-in-Charge & Regional Director Juliet P. Lucas
イベントは成功。新型コロナのため2年間対面で出来なかった。今回は開催できて本当に良かった。アラビカは参加がやや少なかった。
一方、ロブスタは参加者の地理的な分布に多様性が見られた。
南イロコス州以外にSultan Kudrat州が上位に入った。
アラビカ種では、BACCのチェリークルスが言うようにSpecialtyの割合が大きくなった。
ロブスタは、農家がもっと儲けられるように改善の努力が必要。
収穫が遅れたため、運営側は提出の条件を180KGから120KGへ減らし、人数を増やした。(提出期限も延長した。)
組織間(ACDI-VOVA DTI, DA, BCAA)で強い協力があった。この関係を続けたい。
Marketingに関しては国内が主だがマイクロロットで輸出したい。
貿易投資部(PTIC:The Philippine Trade and Investment Center)を在外に配置して機会を伺っている。特に、台湾、日本、韓国に注目しています。
4月にBostonで開催されるSpeciaty Coffee Expoへ農民を招聘することはVisaが難しいのですが、DA、DTI、ACTVOCAは参加します。
貿易産業省ダバオデオロ州事務所長
Atty. Lucky Siegfred M. Balleque (Davao de Oro, Provincial Director)
今回はコーヒーのショーケースとして認知されたので、農家にとって良かった。
参加した農家は全員勝者。本当に勝った人には一時ボーナスですね。
PCQCは5年続けている。今後も続けたい。
品質は上がってきている。プロセサー(Sorter、選別者)も全員興味を持っていて興奮したね。
ダバオデオロ州からはロブスタ1種のみのエントリーでした。
それでも、改善するところがわかってハッピーです。
次回はもっとエントリーを送り込みたい。
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Atty. Lucky Siegfred M. Ballequeさん |
貿易産業省北ダバオ州事務所(コーヒー担当)
Ms. Art Hermoso
Green Gradingを担当したけれど、見ていると豆がかわいくなって落とすのがつらいわね。
少し、虫食いがあっても、失格にしなければならないでしょ。
Green Grading(生豆)審査では350Gとって1粒でも重大な欠点豆(Primary Defect)があると不合格。2次的な欠点(Secondary Defect)は5粒まで。審査する方も3日間ダバオに詰めてました。
Green Gradingもブラインドで実施したので、生豆の記号しかわからない。
農家にとってはチャレンジングね。たまには、ベリーボーラーがいるかいないか、割って中身を確かめたりする必要があるわ。
イベントにはとても興奮しました。Davao地方から12位中、9人が入賞。
アラビカ部門で8名がBACOFAが入賞(筆者注:9名全員がBACOFA関係者)。
生豆審査は3日間で実施。Specialtyクラスが増えて来たわね。ロブスタも改善してきた。
Green GradingはDavao市内のEquilibriumさんで6人で実施したわ。ACDI-VOCAのMimiさんが監督していたらから彼女を含めると7人ね。
焙煎豆の審査も3日で実施。
こちらもブラインドで生豆審査にパスしたSpecialty ArabicaとFine Robsuta計54(?)を焙煎して実施。皆、記号しか見てないわ。
5. 参加自家焙煎店
Koffee Schatz, Coffee For Peace, Inc. , Artisan Brew , Curve Coffee Collaborators , Kuan Coffee , Grind Coffee Bar , Kapeweñoz Specialty Coffee Davao.ph , Drip, KANTO COFFEE , Shake And Stir, Paramount Coffee.
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GRIND COFFEE MOBILE BAR |
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Coffee for Peace |
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Koffee Schtz |
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PARAMOUNT COFFEE(大手) |
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Phil Cafe コーヒー業界に詳しい長髪の大学生 |
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KANTO COFFEE Mindanao Barista 3位Mr. Wenz Orio |
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CURVE COFFEE COLLABORATORS 自転車にまたがっているのは貿易産業省北ダバオ州事務所Artさん |
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ARTISAN |
6. ブース出展団体
RAPID、DTI Davao City Field Office、Davao Coffee
Council, MAGSIGE MPC, DA、BIDELI, Youth Coffee Farmers,
BXAA, ECOTACT, Philippines Coffee Guild, ECOTACT.
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DTI RAPID Project ミンダナオ島及び南部ビサヤにおけるコーヒー、カカオ、ココナツ及びドライフルーツ等の産業振興を目的としている。国際援助機関IFADの支援。 |
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貿易産業省 |
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農業省 |
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ダバオ市カリナン地区よりMAGSIGE多目的農協 |
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BIDELI、フランコ氏の会社 焙煎機の代理販売 |
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フィリピンコーヒーギルド(左)とECOTACT フィリピンコーヒーギルドは主に焙煎士、バリスタの団体で品質向上、コーヒーの課題を生産地からバリューチェーンとして共有することを目的にしている。 |
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ECOTACT、コーヒー関連資機材を販売 |
7. 総評 なぜBACOFA農協は強かったのか?
BACOFA Coopが1団体で9名入賞しました。
理由を考えてみます。
1)大勢の農家が地道に品質管理を行った
これに尽きます。
しかし、5年前に出来ていなかった「大勢の農家による品質管理」が、現在は出来るようになったのか掘り下げてみます。
2)リーダーシップ
明るい性格で努力家のMarivicさんやMaria Luzさんたちを見習って周りを巻き込んで取り組んだことが挙げられます。2016年にMarivicさんは、第2回フィリピン国コーヒー会議(2nd Philippines Coffee Congress、於Baguio市)において優勝、2018年にPCQCで2位となりました。Maria Luzさんも6位に入賞。この2位、6位ロットは、当時のコーヒー価格としては高いP600/KGで購入。それをSAZA Coffeeさんに買って頂き日本で販売されました。
2人はやり甲斐を感じたことでしょう。
3)過去の実績が今年のモチベーションに
2019年のPCQCでMarivicさん優勝、Maria Luzさん6位を含む5人が入賞。2020年は開催されず、2021年にも上位10人にBACOFA農協から6名が入賞。農家がモチベーションを維持できていました。
4)公的セクター、民間、NGOsの連携
農業省、貿易産業省等行政(Public Sector)や自家焙煎店その連合体、Land Bank, Rizal Network Bankなど民間(Private Sector)、NGOs(ACDI-VOCA、KAPWA、Coffee for Peace等)とBACOFA CoopのInteractionが適度にありました。(過度な接触は組織の弱体化、ミスマネジメントに繋がるので注意。)
特に民間においてはValue Chainの最終アンカーが消費者で、Davao市、Cebu、Manila、そして味にうるさい日本のカフェ・消費者様からもフィードバックがBACOFAに返されてきました。
品質がひどいと意見ではなく豆がそのまま送り返された。痛い目に会い陰で涙も流して成長をしてきました。結果、バイヤーや消費者を含め、気を遣える農家になった。近年は農家もQ Graderのトレーニングを受け風味を評価できます。意識と知識・技術の変化は大きい。この変化は、主として広域ネットワークによりもたらされた。
以上、組織の経験のプロセス、組織のリーダーシップ、広域な地域社会における連携、Value Chainの最後のお客様の声、農家の知識・技術の向上など複数の要因によるものと考えられます。
このように考えると経験値で優るBACOFAは来年の品評会でも有利と言えるでしょう。
コーヒー価格は2016年P135/KG(選別なし)から、現在までで約3倍に(選別あり)。努力が価格に反映され野菜からコーヒーにシフトする人も増えた。コーヒー樹ベースのアグロフォレストリーは土壌を野菜耕作より良く保全する。行政、市場民間、コミュニティ、環境、総合的に良くなってきている状況です。
・劣悪な労働環境ではなく農民が自主的に良いコーヒーを作りました。
・良いコーヒーを作る農協を、周りの関係者でサポート。
・環境もコーヒー樹で改善しています。
是非安心して飲んで頂きたい。
<補足>
工事中
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