ミンダナオ島地震2019 概要及び個別の事例 (国際赤十字、国連の情報及び現地インタビュー)


フィリピン火山地震研究所(PHILVOLCS)によると、16日(M6.3)、29日(M6.6)、31日(M6.5)を記録。M5、6クラスの余震も続いていた。震源地は北コタバト州トゥルナン町近くで、同町、キダパワン市、マキララ町、南ダバオ州バンサラン町で被害が大きかった。

概要(10月31日)
影響 29349世帯、146,745人、149バランガイ、ダバオ地方及びソクサージェン地方
避難(避難所): 4,127世帯、20,635人
避難(避難所外):1,370世帯、6,850人
死者:17人
怪我:327人
行方不明:2人
家屋:全壊6,429、一部損壊20,921
学校:全壊2、一部損壊755
医療施設:全壊0、一部損壊37
他の公共施設:全壊4、一部損壊26
道路・橋梁:全壊0、一部損壊16
(参照:International Federation of  Red and Red Crescent Societies,  Cross、2019年10月31日付 https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/MDRPH036ea.pdf)


概要(11月4日)
影響 188,000人、240バランガイ、
避難(避難所): 24,000人
避難(親類宅など):7,500人
*マキララ町では、100,000人以上が影響を受け、テント生活を余儀なくされている。
    特に8つのバランガイでは全員が避難した。

死者:22人
怪我:420人以上
家屋:全壊21,000、一部損壊7,200(筆者注:数字が逆と思われる)
学校:870以上
医療施設:70以上
他の公共施設:80以上
道路・橋梁:25か所

United Nations OCHA、Flash Update No. 3 Philippines: Tulunan, North Cotabato Earthquakes As of 4 November 2019, 5pm  https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/20191104%20Flash%20Update%20no.%203%20Tulunan%20North%20Cotabato%20earthquakes.pdf)

震源地と近隣のMAP



バンサラン町バランガイマナガ、プルート集落
バンサラン町バランガイマナガのバルタカイ地区プルート集落(標高1,500m)の85世帯のうち57世帯は31日に山を下り数か所に分かれて避難した。マナガのマリパヨン集落に避難した15世帯(約45名)は、子供の学校の寄宿舎の前にテントを張って生活している。プルート集落長アリエル・ドゥブリア氏(36)は自宅の壁1面が崩壊する被害を被ったが、「被害が大きいプルート集落の復興に少しでも援助をしてくれればありがたい」と集落優先するコメントをした。

南ダバオ州バンサラン町バランガイマナガ中心地域の避難所にて。
プルート集落長アリエル・ドゥブリア氏(左)、BACOFA農協組合長マリビック・ドゥブリア(右)
崩壊したBACOFA農協の倉庫兼事務所、
南ダバオ州バンサラン町バランガイマナガ、
プルート集落にて、Mt. Apo標高1,500m地点

南ダバオ州バンサラン町バランガイマナガ、
バルタカイ地区プルート集落、崩落した保育園
一部損壊、アマバさんの家。
南ダバオ州バンサラン町プルート集落

説明を南ダバオ州バンサラン町バランガイマナガ、プルート集落、
今年の品評会で6位のマリアルースの家


南ダバオ州バンサラン町
南ダバオ州バンサラン町副町長ユージーン・クラタ氏は被害について以下のように述べた。

6つのバランガイで学校の校舎の再建設が必要。以下のバランガイ(アルタビスタ、ビタオグ、リザール)では、70~90%の家屋が部分倒壊または完全倒壊した。必要物資は、食料、飲料水、そしてブルーシートである。特に水源が影響を受け飲料水が濁りミネラルウォーターが必要になっている。

視察中のバンサラン町副町長ユージーン・クラタ氏(右から2番目)にコーヒーを振舞う住民
町全体の被害を把握し、且つ救援物資の配布を終え、災害時にも余裕を見せる副町長
バランガイ・ドゥロ
バンサラン町の中心に近い、バランガイドゥロでは1300世帯のうち、450世帯が一部または完全崩壊し、7か所に分かれて避難している。バランガイ長エリンダ・デラセルナ(64才)も自身も家が壊れたため、校庭のテントで寝るとのこと。余震が怖いため、いつ戻るかは未定。ニーズは、飲料水、食料。町の水道システムが影響を受け、水が濁っているため、飲料水は購入し出費がかさんでいる。


南ダバオ州バンサラン町バランガイドゥロ
バランキャプテンのエリンダ・デラクレナ(64才)右から2番目。
避難キャンプのチェアマン、エルネスト・ウバス氏(右端)

南ダバオ州バンサラン町バランガイドゥロ
公立小学校校庭の避難所の様子

バランガイ・ダラプアイ
北コタバト州マキララ町に境を接するバンサラン町バランガイ・ダラプアイでは、世帯数450の約半数の家屋に被害があったとされる。同小学校には、67世帯がテントを張り避難していた。やはり水の出が弱くなり、濁るとのこと。被害を受けた家が多い印象だが、再建も始めている。
ダラプアイ公立小学校(バンサラン町バランガイタラブアイ)
2019年11月3日撮影 

北コタバト州マキララ町
移動中、幹線道路沿いに並ぶテントが目を引く。バランガイ・ブエナビダでは100軒以上ある、すべての家が完全に壊れた。(ただ1軒だけ建っているが入れないとのこと。)バランガイホールも教会も崩壊したとのこと。隣の家の小学校1年生の子供が家に倒れた家の下敷きで亡くなった、エメリータ・オルブダ(57才)は語った。幹線道路上の避難所は宗教関係の知人と交渉して他の世帯と一緒に借りているが、トイレが人数の割に少なく不便。ニーズは、食料と帰る家。当面、土砂崩れの心配があり、帰ることが出来ない。

北コタバト州マキララ町幹線道路沿いの家
自宅が崩壊し下敷きとなり全身に怪我をし入院中の
エクシオペランサ・カルデナスさん(72)


マキララ・メディカル・スペシャライズド・ホスピタル
エクシオ・ペランサ・カーデナス(72)さんは、バランガイ・ブエナビダで、10月31日、平屋建ての家の中にいて地震にあい、ブロックの壁が倒れ下敷きになった。約10分後に隣人に救出されたが、頭5か所、右足や手を怪我し入院している。

ラネリータ・サリゴンバ医師(33)によると、同病院では地震による被害者が47名で、1名死亡、1名は入院をすすめたが帰宅、9名が入院、7人はダバオ市に移送、16人は軽傷、とのこと。課題は飲料水で、現在、下痢を起こす人が多いとのこと。

病院建物が被害をうけたため野外で業務を継続する看護師と医師。
このような野外の環境でも明るく働くフィリピン人の性質は素晴らしい。
Makilala Medical Specialized Hospital, Inc.にて。2019年11月3日撮影
Makilala Medical Specialized Hospital, Inc.
11月3日7PM

帰宅時に、バランガイ・ロデロでは、山の上の方に老人らが孤立しており救援物資が届いていない、食料が無い、連絡を取って欲しいと住民から呼びかけられた。

飲料水や食料の供給が緊急の課題である。一方で、インフラや家屋の復旧において長期化が予想される。バランガイ(最小行政区)単位で家屋がすべて倒壊した地域の回復には、より困難が予想され、元々住んでいた場所を諦め、再定住地と低コスト住宅を建設することが選択されるかもしれない。

弊社が提携しているコーヒー生産者は本日(11/5)あたりから、村に帰りつつあります。
生産設備の復旧については、これからの相談になりますが、とりあえずは余震がこれ以上起きないことを祈っています。

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