ダイヤモンドオンライン記事の補足(1) コーヒーコンテスト優勝(2016年)の経緯について
ダイヤモンドオンライン記事の補足(1)
コーヒーコンテスト優勝(2016年)の経緯について
記事でコーヒーコンテスト優勝(2016年)に言及して頂きましたが、文字数に制限があり、どうしても十分には説明にはしきれておりません。優勝までの取り組みが、容易だったのか困難だったのかを、より明確にする目的で以下綴っていきます。
断っておきますが、ライターさんは1時間半のインタビューから簡潔に流れるストーリーを構成して下さいました。以下には、インタビューの際に端折った細かい内容も含みます。
ダイヤモンドオンライン記事から
(引用開始)少しずつ選別の精度が上がって来た時に追い風が吹く。前述の元コーヒー製造販売業者の知人をフィリピンに呼び、さらなる豆の選別をトレーニングした時にダメ元で応募した「第2回フィリピンコーヒー会議」(2016年11月にバギオ市で開催)のコンテストで優勝してしまったのだ。(引用終わり)
2016年に最初に生豆を入手してから優勝するまでの経緯は以下の通り。
2016年
1月 入手及び評価
現地NGOにお願いして、生豆2キロを入手。
ナチュラルとウオッシュド各1キロで生産者の氏名の記載有。
日本で大手コーヒーメーカーのOBの方(M氏)が手で選別したものを、その会社の研究所でテスト焙煎及び評価して頂いた。結果は良くポテンシャルが認められた。
実際に酸味と甘みがあり、好ましい風味であった。
3月 現地訪問
Mt. Apoの生産地を初訪問。
ローカルバイヤーが買い取りを中止し、17トンのうち10トンが売れずに残っていた。
生豆はAll-inと呼ばれる未選別の状態。
売れ残った生豆 |
標高1,300~1,700mでは高付加価値野菜の栽培が盛んであり、土壌流出対策が課題であることは一目瞭然であった。現地NGOは約10年まえから農民にコンタクトを取り、伐採と野菜の過耕作を止め植林を勧めていたが、生活が懸かっている農民はどうしても折り合えなかった。しかし、農法に持続性がないことは農民も理解し、長い話し合いの末、数年前にコーヒー樹を植えることで合意した経緯がある。苗木の間に野菜を植えることが出来るため、収入を大きく下げることにはならなかった。とは言っても、2~3年間、収益のないコーヒー樹を導入する決断をした農民の勇気とNGOのリーダーシップに尊敬の念を抱かざるを得ない。マーケティングを通じてコーヒー栽培をより持続的にすることが自分たちの役割の1つと感じさせられた訪問になった。
4月 日本で焙煎
日本に、生豆7㎏を持ち帰る。
江東区清澄白河のARiSE
COFFEE ROASTERS林さんにお願いして焙煎していただいた。
色付きの薄い欠点豆の多さを指摘される。
欠点豆と適切に焙煎された豆を食べ比べると、差は歴然。
5月 選別のトレーニング(第1回)
欠点豆と適切に焙煎された豆を、フィリピンに持ち帰り、NGOスタッフ及び農民にも齧ってもらい味を比較してもらった。
生豆100㎏分を購入し、選別を行ってもらった。
生豆100㎏分を購入し、選別を行ってもらった。
100㎏のうち、50㎏は日本へ輸出した。この際、フルーツ商社(F社)、通関業者(T社)、バナナ会社大手のD社(Japan)、D社(Philippines)以上4社の関係者の方々にお力添えを頂いた。
9月 選別のトレーニング(第2回)
トレーニングに子供が参加し、視力が良いため、きれいに選別をしてくれた。
日本に持ち帰り、ARiSEさんで焙煎した結果、欠点豆が6㎏中11粒のみと大きく改善した。
10月 選別のトレーニング(第3回)
大手コーヒーメーカー OBのM氏が実施。
一次選別をしたのち、250gを参加者に渡す。
各自、選別を実施した後、M氏がチェック。だいたい、2割を欠点豆として除去するという感覚を掴んでもらった。
11月 コンテスト
農家組合の生豆数キロを購入した人が、コンテストに出品。
農民もエントリーを当初は知らなかったとのこと。
優勝し、組合長のジュン・ゴンザレス氏が表彰を受けた。
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2nd Philippines Coffee CongressにおいてBACOFAの生豆サンプルが優勝(85.6 point) 中央の黒い上着が組合長(当時)のゴンザレス氏 |
2016年に初めて生豆を見てから、3度のトレーニングを経て、コンテスト優勝までの経緯について述べました。ライターさんには、「ダメもとで出品した」という表現でOKですと伝えていたが、知らないうちに誰かが出品したというのが実際のところである。
優勝の理由
1)11月のコンテストに対し、直前の10月に質の良いトレーニングを行ったこと。
2)他団体では、選別に対する認識や技術が比較的高くなかったであろうこと。
3)BACOFAのコアメンバーが真面目で、ほぼ基準通りに選別をしていたこと。
以上に起因すると考えられた。
特に、生産者は、自分たちのコーヒーを「浅煎り」で飲む経験には恵まれない。欠点豆の味を齧って確認することもない。良いコーヒー、悪いコーヒーを理解して、真面目に選別してきたことが良い結果につながった。
なお、以降の結果は以下の通り。
2017年3月、組合の生豆は予選落ち。(水分含量が高く、減点)
2018年3月、アラビカ部門で2位(ナチュラルプロセス)と6位(ハニープロセス)に入賞。
おまけですが、ARiSE
COFFEE ROASTERS(江東区)林氏のコメントに関して補足:
(引用開始)しかし、店主は焙煎後の豆を見て言ったという。「これはダメだね。欠点豆、未熟豆が多すぎる。全部一括りに袋に入れるのではなく、しっかり豆を選別しないと日本で売るのは難しいよ」(引用終わり)
内容は、ライターさんの書いた趣旨の通りで間違いありません。テープおこしされたはずで、私の発言がニュアンスまで伝えていなかったのでしょう。
大御所、ご意見番のような物言いですが、実際はソフトでアドバイスは親切且つ具体的なものでした。実際に、非常に気さくで親切な人柄に惹かれて、人がよく集まっきています。是非、確認してみて下さい。
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